デザイン制作を外部のデザイナーに依頼する際、成果物が期待通りにならないことがあります。
この記事では、デザイン依頼をスムーズに進めるための重要なポイントや、デザイナーとのコミュニケーションのコツをまとめました。デザインの目的を明確にし、適切な指示を行うことで、満足のいく成果物を得る方法を解説します。
デザイン依頼前に確認すべき4つのポイント
まず、デザインを依頼する前に確認すべき重要な4つのポイントを紹介します。これを事前に押さえておくことで、デザイン制作はスムーズに進行し、トラブルを回避できます。
1. 依頼内容を固める
依頼者が準備不足のまま依頼を行うと、最終的なデザインに影響が出ることがあります。まずは、デザインの目的やターゲットを明確にし、参考となる資料やイメージを準備しておきましょう。
最初に伝えておきたい内容の具体例
- デザインの目的
- 何を達成したいのか、デザインの目標や役割を明確に伝えます。例:ブランディング強化、集客、製品やサービスの認知拡大など。
- ターゲット層
- どのような層に向けたデザインかを伝えます。年齢、性別、職業、興味・関心などを含めて、ターゲット層の詳細を共有することが重要です。
- トーン、スタイル
- 例えばブランド広告なら、そのブランドのイメージや雰囲気(トーン&マナー)を伝えます。
例:カジュアル、プロフェッショナル、遊び心がある、エレガントなど。
- 例えばブランド広告なら、そのブランドのイメージや雰囲気(トーン&マナー)を伝えます。
- 色やフォントの指定
- イメージカラーや特定のフォントを使用したい場合は、その指示を事前に行います。デザインを作り始めてからでは遅いので、最初に伝えましょう。特定の印象を与えたい場合、どの色を好むかも重要です。
- 具体的な内容・メッセージ
- デザインに盛り込むべき具体的なテキストやメッセージ、コピーライトを明確に伝えます。
- サイズ、フォーマット
- 最終成果物のサイズ(例:ポスター、バナー、SNS用画像など)や、デジタル/印刷用などのフォーマット(例:PDF、JPEG、AIファイル)を指定します。
- デザインの使用場所や媒体
- デザインが使用される場所や媒体(ウェブサイト、SNS、印刷物など)を伝えると、デザイナーが適切なレイアウトや視覚的アプローチを選択できます。

2. スケジュールに余裕を持つ
デザイナーに依頼する際、急な納期は避けましょう。最低でも2週間の余裕を持ったスケジュールを組み、各段階(デザイン案のすり合わせ、ラフ案の提出、修正など)を計画的に進めます。

「納品希望日の2週間前に依頼しましょう」という意味ではなく、「トラブルで2週間遅延しても大丈夫なスケジュールを組みましょう」ということです。
以下、その理由を説明します。
最低でも2週間の余裕を持った方がいい理由
- プロジェクトの複雑さ
- デザインの規模や複雑さによって時間がかかるため、時間に余裕を持たせる必要があります。シンプルなロゴデザインと、パンフレットやウェブサイトのように複数ページにわたるデザインでは、当然作業量が異なります。
- リサーチやコンセプト作成
- デザインは、単に視覚的な要素を作成するだけでなく、ターゲット層や目的に合ったリサーチや、コンセプトの立案が含まれます。これには一定の時間が必要です。しっかりとした調査や計画がないと、完成したデザインが目標に合わないリスクがあります。
- フィードバックと修正の時間
- 初回のデザイン提出後にフィードバックや修正が発生するのは通常のプロセスです。特に、デザインを複数のステークホルダー(例:チーム、クライアント)に確認する場合、全員の意見を取り入れる時間も考慮しなければなりません。
- デザイナーのスケジュール
- デザイナーは他のプロジェクトやクライアントとの作業が並行している場合が多く、スケジュールが既に詰まっていることもあります。そのため、即座に作業に取りかかれない可能性があるため、早めに依頼することで余裕を持たせることが大切です。
- クオリティの確保
- 急ぎの依頼はどうしてもクオリティが下がるリスクがあります。じっくりと考え抜かれたデザインは、時間をかけて練られることが多いので、余裕のある納期が高品質のデザインにつながります。
- 突発的なトラブルへの対応
- プロジェクト中に予期せぬ問題が発生することもあります(例えば、技術的な問題や、関係者の意見変更)。こういったトラブルに備えて、スケジュールにバッファ(余裕)を設けておくことが重要です。
納期に余裕がない場合のリスク
- 修正が不十分になり、納得いくデザインにならない。
- デザイナーのストレスや混乱につながり、結果としてコミュニケーションがうまくいかなくなる。
- 急ぎ対応のための追加料金が発生する可能性もある。
以上の理由から、最低でも2週間、複雑なプロジェクトの場合は1ヶ月以上の余裕をもってデザインを依頼するのが望ましいです。
3. 料金や契約内容を明確にする
デザイン制作にかかる費用は、制作物の用途やサイズによって異なります。日本イラストレーター協会の料金表などを参考にしながら予算を設定し、契約書には納期や利用範囲、修正回数、知的財産権の扱いなど、重要事項を明記します。
デザイナー側が料金表を用意している場合には、それに従う形で問題ありません。
4. 具体的な指示を行う
依頼者が思い描くイメージは、デザイナーに正確に伝わらなければなりません。抽象的な表現ではなく、具体的な指示や見本、参考となる資料を用意し、デザインのイメージを共有しましょう。
デザインが思い通りにならない理由
多くのデザイン依頼者が「思っていたイメージと違う」という経験をします。このような問題は、依頼者とデザイナーの間で発生するコミュニケーションのズレが原因です。
以下の理由が、デザインが思い通りに進まない典型的な例です。
- コミュニケーション不足
- 依頼内容が不明確だと、デザイナーは自分の解釈でデザインを進めてしまい、結果として依頼者の期待とは異なる仕上がりになることがあります。具体的な要望や方向性を伝えないと、誤解が生じやすくなります。
- デザイナーはプロフェッショナルですが、全てを任せてしまうと依頼者のイメージとは違う方向に進んでしまうことがあります。依頼者が何を求めているのか、目的やターゲットを具体的に伝え、デザインの意図を共有しましょう。
- フィードバックが不十分
- フィードバックの際に、具体的でないコメントや、「いい感じ」「少し違う」といった曖昧な表現では、デザイナーがどの部分を改善すべきか理解しにくくなります。具体的な変更点や希望を伝えることが大切です。
- ただし「具体的すぎる指示」はデザイナーへの枷になります。詳しくは後述します。
- 修正を繰り返しすぎると、全体のバランスが崩れ、最初に描いたイメージとかけ離れたものになってしまうことがあります。修正の際も、全体を見据えたアプローチを心がけましょう。
- 目的やターゲット層の誤解
- デザインの目的やターゲット層がデザイナーに正しく伝わっていないと、意図する方向性と異なるデザインが生まれます。例えば、若年層向けのデザインを依頼したのに、フォーマルすぎる仕上がりになった場合などが考えられます。
- 期待するデザインのスタイルが伝わっていない
- 依頼者が期待するデザインのスタイルや雰囲気が明確に伝わっていない場合、デザイナーは自分のスタイルや過去の経験に基づいて進めてしまうことがあります。
- 「自分はイメージを的確に伝えられる」と思うのをやめ、ビジュアルの参考資料を用意しましょう。共通のイメージを持てるようにするのが最も効果的です。
- 予算や納期の制約
- 十分な予算や納期がない場合、デザイナーは時間的、金銭的な制約の中で作業せざるを得ず、クオリティが低下する可能性があります。
- 時間が足りないと、細部にまで気を配れず、期待通りの仕上がりにならないことがよくあります。
- デザインの自由度が制限されすぎている
- デザイナーに過剰に細かい指示を与えると、創造性が抑えられてしまい、魅力的なデザインが生まれにくくなります。デザインにはある程度の柔軟性を持たせることで、より良いアイデアが生まれる可能性があります。
- 指示が細かすぎると、デザイナーはそのまま制作してしまうことがあります。指示に従った結果、期待通りにならなかった場合でも「言った通りに作った」という事態に陥ることもあるため、なぜその指示が必要なのかを説明しましょう。
- 依頼者とデザイナーのセンスの違い
- 依頼者とデザイナーの間で美的感覚やセンスの違いがあることも、仕上がりが思い通りにならない原因の一つです。特に、デザイナー選びの段階でスタイルのマッチングを確認していないと、この問題が生じやすくなります。
- 「かっこいい」「可愛い」といった抽象的な表現では、依頼者とデザイナーの間に認識のズレが生じやすいです。イメージを共有するためには、具体的な見本や参考資料を提示することが重要です。

デザイン依頼の例文・参考
デザイン制作の成功には、具体的で的確な指示が欠かせません。
以下に伝えるべき内容の例を用意したので、こちらを参考にして伝えるようにしましょう。
- 目的: 何を目的としたデザインなのかを明確にします。
- このデザインの目的は、当社の新製品「XYZ」の販促資料です。
- ターゲットは20代から30代の若年層で、モダンかつシンプルなデザインを希望しています。
- 主にSNSやWeb広告で使用する予定です。
- 使用素材: 会社のロゴやマークなど、必須の素材を共有します。
- 当社のロゴと製品写真を添付しておりますので、デザインに組み込んでください。
- 特にロゴの配置については目立つようにお願いします。
- 納品データの形式: 印刷物かWeb用か、用途に合わせた形式を指定します。
- 最終納品はWeb用のJPEG形式(RGBカラー)でお願いします。
- 加えてAIファイル形式の元データもご提供いただければと思います。
- カラーモード: 印刷物の場合はCMYK、Web用の場合はRGBのカラーモードを指定します。
- Webでの使用がメインですので、RGBカラーモードでお願いいたします。
- 画像サイズと解像度: 最適なサイズと解像度を事前に確認します。
- 画像サイズは1080x1080ピクセルで、解像度は72dpiでお願いします。
- 高解像度の画像は別途ご相談いたします。
- デザイン案のパターン数: 複数のパターンから選べるかどうかを依頼します。
- 複数のパターンから選びたいので、可能であれば3パターンほどのデザイン案をご提案いただけますと助かります。
- 1案増えるごとに掛かる料金をご教示頂けると助かります。
- ラフ案や修正の料金: ラフ案や修正にかかる料金を確認し、追加料金が発生するかを確認します。
- ラフ案やデザイン修正にかかる料金について、事前にご確認させていただきたいです。
- 特に修正回数によって追加料金が発生するかどうかを教えていただけますと幸いです。
- デザインのイメージ
- デザインのイメージとしては、クリーンでモダンな印象を希望しています。具体的には、白や淡いグレーを基調とし、アクセントカラーとして当社のブランドカラー(ブルー)を使用してください。全体的に、シンプルながらも視覚的にインパクトのあるデザインを目指しています。
- ターゲット層は若年層(20〜30代)なので、スマートで洗練された印象を与えるデザインが理想です。Appleのプロモーション資料や北欧デザインのようなミニマルなスタイルをイメージしています。
- また、ユーザーが視覚的に「安心感」と「信頼感」を感じられるようなデザインを意識していただけると嬉しいです。
- Pinterestのボードをお送りしますので、そちらも参考にしていただければと思います。
効果的なデザイン依頼のためのコミュニケーション
デザインの成功は、依頼者とデザイナーの適切なコミュニケーションによって決まります。依頼前の準備やイメージの共有、具体的な指示とその理由を説明することが、満足度の高い成果物につながります。
デザイン制作を依頼する際には、これらのポイントを参考に、デザイナーとの連携を深めましょう。依頼者とデザイナーが同じ目標に向かって進めば、期待を超えるデザインを生み出すことができます。