なぜ「コンセプト文」が必要なのか
作品やデザインを見せるとき、
「かっこいい」「おしゃれ」だけでは伝わらないことがあります。
見る人に伝わるのは、“なぜそれを作ったのか”という意図です。
その意図を言葉にしたものが「コンセプト文」。

単なる説明ではなく、デザインの背後にある思考を翻訳する文章です。
クライアント提案、コンペ提出、ポートフォリオ、展示パネル、SNS投稿。
どんな場面でも、コンセプト文の有無で印象が変わります。
言葉は、デザインのもうひとつのデザインです。
-
-
デザインを“言葉にする”意味|“説明できる”デザイナーが評価される時代
なぜ今「デザインの言語化」が必要なのか デザインの現場では、いま“感覚”よりも“説明できる力”が求められています。「なんとなく良い」では通用しない時代です。 クライアントは「なぜこの色なのか」「どうし ...
続きを見る
コンセプト文とは「考えを翻訳する言葉」
「コンセプト文」と聞くと、難しい言葉で理屈を並べなければいけないと思われがちですが、本質はもっとシンプルです。

デザインの中にある“見えない理由”を、誰にでも伝わる言葉にすること。
デザインには必ず、「選んだ理由」が存在します。
色、形、余白、フォント、構成。
それぞれに意図があり、思考の結果があります。
それを言語化することが、コンセプト文の役割です。
言葉にすることで、作品の中にある思考の軸が浮かび上がり、
見る人が「作者の視点」を追体験できるようになります。
良いコンセプト文に共通する3つの構成要素
コンセプト文は、構造を理解すれば誰でも書けます。
伝わる文章には、共通する3つの柱があります。
- 背景(Why):なぜこのテーマに取り組んだのか
- 目的(What):どんな印象・価値を伝えたいのか
- 表現方法(How):それをどんな形で実現したのか
この3点を意識するだけで、言葉が整理されます。
都市の中で失われつつある「静けさ」をテーマにしました。
見る人が深呼吸できるような空気感を目指し、
グリッドをゆるやかに崩した構成で“余白のリズム”をデザインしています。
一文ずつ見るととても平易ですが、
背景 → 目的 → 方法 の流れがあることで、読む人は自然に納得します。
書く前に整理すべき「4W1H」
書き始める前に、まずは以下の5点をメモにまとめてください。
項目 | 内容 | 例 |
---|---|---|
Who | 誰に届けたいデザインか | 都市で働く20代の社会人 |
What | 何を伝えたいか | 一日の終わりに感じる小さな安堵 |
Why | なぜこのテーマを選んだのか | 忙しさの中に“呼吸できる時間”を作りたかった |
Where | どんなシーン・媒体か | カフェのポスター・SNS広告 |
How | どう表現したか | 柔らかな余白と低彩度の配色で静けさを表現 |
この5つを箇条書きで整理してから書き始めると、コンセプト文は自然と一貫性を持ちます。
実例で見る:良い/悪いコンセプト文の違い
柔らかい印象のポスターを目指しました。
優しい色合いで癒しを感じられるようにしました。
→ 何を、なぜ、どうやって作ったのかが曖昧。
読んでも「理由」が伝わらない。
忙しい日常の中で立ち止まる瞬間をテーマにしました。
柔らかな色調と余白を多く取る構成で、見る人が呼吸を整えられるような印象を狙っています。
→ テーマ(Why)+目的(What)+表現(How)が揃い、読後に情景が浮かぶ。
書き出しで印象を決める「導入一文」
コンセプト文の最初の一文は、「テーマを端的に示す」ことが大切です。
ここが曖昧だと、読者が何を意識して読めばいいかわからなくなります。
例文テンプレート:
「〇〇をテーマに制作しました。」
「〇〇という感情を、△△で表現しています。」
「〇〇の中にある△△を、形として可視化しました。」
たとえば──

「人の記憶に残る“音のない時間”をテーマに、空間の静寂をポスターで表現しました。」
この一文だけで作品の世界観が伝わります。
“説明”ではなく、“視点の共有”を目指しましょう。
読まれるコンセプト文の構成テンプレート
テーマ(Why)
どんな背景や動機でこの作品を作ったのか。
狙い(What)
見る人にどんな印象・感情を持ってほしいのか。
表現(How)
具体的に、どのような構成・色・形でそれを実現したのか。
この流れを意識すれば、200〜250文字で十分に伝わるコンセプト文が完成します。
都会の中で感じる孤独をテーマに制作しました。
夜の街を歩くような静かなリズムを表現するために、
光の反射を思わせるグラデーションと、広い余白で“距離感”を演出しています。
書くときの注意点
- 抽象語だけで終わらせない
- 「優しい」「温かい」は説明にならない
- 専門用語を避ける
- 見る人の多くは非デザイナー
- 長文にしすぎない
- 要点を100〜300文字でまとめる
- “感情”と“事実”をセットで書く
- 「落ち着く配色」→「低彩度トーンで落ち着きを演出」

言葉を“装飾”ではなく“構造”として使う。
それが伝わるコンセプト文の条件です。
書けないときはChatGPTを使って整理する
文章に詰まったときは、ChatGPTに整理を手伝わせましょう。
あなたはデザイン分野に詳しい編集者です。
以下の情報をもとに、作品コンセプト文を200文字以内で3案作成してください。
【テーマ】
【目的】
【表現方法】
【想定読者】
AIに書かせた文章をそのまま使うのではなく、自分の言葉に整えるのがコツです。
AIが見せてくれるのは“論理の地図”。
そこに“感情”を足すのが、デザイナー自身の仕事です。
コンセプト文を書くことは、デザインを磨くこと
言葉にすることで、デザインの理解が深まります。
書くたびに、「自分は何を大切にしているのか」が見えてきます。
コンセプト文は提出物の付け足しではなく、思考の整理と自己分析のプロセスです。
デザインと言葉は、双方向に磨かれる。
言葉を整えると、デザインも整う。
まとめ|“言葉で伝える力”が、次のチャンスを連れてくる
- コンセプト文は「背景・目的・表現」の3構成で書く
- 抽象語ではなく“理由”を明確にする
- 読む人が情景を思い浮かべられる文章を意識する
- 書くことで、自分の思考がクリアになる
どれだけ優れたデザインでも、
意図が伝わらなければ「なんとなく良い」で終わってしまう。
逆に、言葉で説明できるデザインは、人を動かします。
あなたの作品に、もう一つのデザイン――言葉のデザインを。
-
-
デザインを“言葉にする”意味|“説明できる”デザイナーが評価される時代
なぜ今「デザインの言語化」が必要なのか デザインの現場では、いま“感覚”よりも“説明できる力”が求められています。「なんとなく良い」では通用しない時代です。 クライアントは「なぜこの色なのか」「どうし ...
続きを見る